CRETのコラム/レポート Activities

CRETから、最新の教育・テストに関する世界の動向などをお届けします。

[海外の事例] 海外の方向性とSTEM教育団体

米国国立科学財団(NSF)がSMETという呼称をSTEMに変更した2001年から17年が経ちます。国を越えた公益や各国事情を鑑みた国策など多様な目的のもと、世界中でSTEM/STEAM教育が広がりを見せています。

このレポートでは諸外国のSTEMの方向性や主なSTEM関連の教育団体についての概略をお伝えします。

 

◆米国の方向性

大幅削減の可能性もあった2018年度のSTEM教育関連予算は、最終的に若干増加しました。予算状況から、前政権からの連続性をもって進められると思われます。米国のSTEM関連の教育については、将来性や収入が比較的高いSTEM関連職に従事する人材の確保や、社会経済的な繁栄をもたらすイノベーションを興す人材の育成を掲げており、それは世界共通の課題でもあります。米国で有効な教育プログラムやアプローチが証明されれば、その情報は似たような教育カリキュラムや政策目標を持つ国々にとって汎用性が高いものとなることでしょう。

 

政府から各種団体を経由して学校の教育活動を支援するケースが目立っていましたが、最近では自動車、エネルギー、スポーツのように、産業ごとに学校教育を支援することもより多様化しているようです。このように私企業に端を発する非営利団体やその集合体は、EU、中南米、アジア各国など世界的な連携と実践を進めています。政府が示す次の展開と相まって、企業が学校を支援する具体的な成功例が期待されます。

 

今後については、ホワイトハウスが公表したSummary of The White House State-Federal STEM Education Summit(2018年6月28日)をご参考ください。今後の展開を紹介します。

  • - 「2010 年米国の技術・教育・科学における卓越性に関する意味ある促進機会の創造再授権法」に従い、2018-2023年には米国全土でSTEM教育の実践計画が促進される
  • - この計画では、短期的および長期的な目標だけでなく、各連邦機関が有効だと検証されたSTEM教育プログラムのアプローチを特定する
  • - 未来の職業への準備と、革新的な職業訓練プログラムの推進を支援する

 

◆米国の団体

〇 STEM Education Coalition ※全米とりまとめ機能的   

 NSTA(National Science Teachers Association) ※理系教員

 Afterschool STEM Hub ※実践例

 SAE Foundation, Inspiring Curiosity in STEM ※自動車業界

 

◆EUの方向性

欧州委員会では、1990年代からEU加盟国のSTEMに関する教育政策の推進に焦点を当ててきました。STEM関連職の選択や大学でSTEM分野を専攻することなどを奨励するとともに、EU圏内の国や非営利団体では多くの成功事例を体系的に研究しています。2020年に向けたEUのSTEMアクションプラン(2012-2020)によると、2016年以降のSTEM教育の対象として「女子」「中等教育段階の技術や職業教育」「社会経済的に不利な背景を持つ若者」が重視されています。EUに加盟する複数国で施策を分担したり、政策が学校で実装されるまでの計画や説明が明快なところが参考になります。

 

◆EUの団体

 EU STEM Coalition ※EUとりまとめ機能的

 STEM Alliance ※学校、非営利団体、企業等(European Schoolnet傘下) 

 SCIENTIX ※教員研修やリソース(European Schoolnet傘下)

 

◆英国の方向性

英国でも長年に渡り、STEM教育についての実践と研究が行われています。初期の焦点は科学、工学、技術(SET)でしたが、2006年頃からSTEMという呼称が主流になっています。しかし、今でもSETを使い分けている場合も見られます。2002年に大蔵省から発表された「SET for Success」には、現在のSTEM戦略を考える際の骨子ともいえる課題の多くが端的に書かれています。1990年代に学習者の理数離れが顕在化し、特に物理と化学の履修者減が取り沙汰されているのが印象的です。

 

STEM関連の団体数については、把握できないほど増えていることが「英国のSTEM教育の情勢」(王立工学アカデミー2016)やSTEM教育の国際的な意義について書かれたジャーナル(2017)などからわかります。世界経済や社会全体の変化に連動して国の政策と関わるだけに、教育にも多様なステイクホルダーが複雑に絡み合うのは、英国に限らず世界中で見られる傾向と言えます。

 

STEM関連の教育が盛んになる一方、英国会計検査院(NAO)の「経済のためのSTEMスキルの提供」(2018年)によると、EU離脱の影響、STEMが複合的に多くの教科にまたがるので定義が安定しないこと、人材不足というよりも今はミスマッチが多いこと、理数系教科の選択人数が政府目標に未達など、多くの課題が指摘されています。

よって今後の方向性は、「全員のスキルと能力を最大限に生かすキャリア戦略」(教育省2017)にも書かれた2020年までの目標の遂行にあたり、成果が向上する具体的な実行策が求められることになりそうです。

 

◆英国の団体

 National STEM Learning Centre and Network  ※かつてのSTEM関連組織を統合。EUに参加。研究、リソース、賞授与、パートナーシップのプラットフォーム等

 STEM Clubs ※100%の高校、先生2万人、生徒200万人、進路は90%STEM職

 Year of Engineering ※英国政府のサイト。広義のエンジニアリング中心のリソース

 

(CRET研究員 生咲 美奈子)

生咲 美奈子 -Mina Kisaki-

CRET研究員

趣味:歌詠み、書道、手芸

研究テーマ:グローバル能力、グローバル市民教育、海外教育事情

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