CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

日本グループ・ダイナミックス学会第63回大会 発表報告
~現代におけるシャイネスのイメージ調査 (2) ―自由記述を中心に―~

2016年10月9日から10日にかけて九州大学箱崎キャンパスにて開催された日本グループ・ダイナミックス学会第63回大会に、澤海研究員と参加し、発表を行いました。

 

私は現在の住まいが長崎なので、どの学会に行くにも基本的に空路での移動です(私はあまり飛行機が得意ではありません)。今回は待ちに待った九州での開催で、会場となった九州大学箱崎キャンパスは博多駅から近い場所にあり、陸路で長崎から博多まで2時間少々かけて向かいました。

 

最寄り駅の箱崎九大前駅を出ると、すぐ大学の敷地が見えました。そこで感じたのは「とにかく広そうだ」という印象でした。そして、やはり広いのです。スマートフォンの地図を見ながら、敷地らしきところに入ったのでもう着くかなと思いきや、そこはまだ敷地の入口。会場にたどり着くまでには予想以上の時間がかかりました。

 

このキャンパスは2年後には移転するそうなので、足を踏み入れるのは最初で最後になったのかもしれません。古めかしく、伝統を感じさせる建物を会場として発表ができたのは、私にとって幸運でした。

 

私はCRET相川研として実施した研究(現代におけるシャイネスのイメージ調査 (2) ――自由記述を中心に――)を9日に発表しました。澤海研究員を筆頭としてもう1件の発表を申し込んでおり、お越しいただいた方々には2件分の発表に対してご意見をいただくことができました。

 

これまで私たちは、「シャイネス」という言葉をキーワードに、種々の研究を重ねてきました。シャイネスとは、「内気さ」「恥ずかしがり屋」の程度のことで、シャイネスが高い人は対人コミュニケーション場面でうまく振る舞えないことが多いとされています。西洋では「自分がシャイである」ということは、ネガティブな評価をされる可能性が高いという研究があるのですが、日本ではどうでしょうか?「私、シャイだから」と話すことは、「私はうまく人とコミュニケーションをできない人なんです」という意味なのでしょうか。誰かに「君はシャイだね」と言われたときに、「あなたは”コミュ力”が不足しているダメな人だね」というメッセージだと感じるでしょうか。時と場合によると思いますが、そこまでネガティブな印象は受けない気もします。

 

そこで、日本において「シャイネス」とはどのような「イメージ」を持たれているか、Web調査を利用して、10代から60代までの多くの方に回答をいただき、結果を集計したものを発表しました。以下に結果を要約します。

 

まず、(1)「シャイネス」を日本語にする場合、「恥ずかしがり(屋)」、「内気(さ)」、「照れ(屋)」などの反応が多くありました。これは2012年に私たちが大学生を対象に行った小規模な調査結果とも似ており、幅広い年齢層においても同じような結果が得られたといえます。また、少数ですが、「謙虚な」「ピュアな」「優しい」といったポジティブな表現も見られました。次に、(2)「シャイネス」は肯定的・否定的な意味のどちらを持つか、という質問をすると、ほぼ半々に分かれました。この点は興味深く、1988年、2012年に行われた同様の調査(ここでは、肯定的と答えた人はそれぞれ30%、40%ほどでした)よりも、シャイネスに対してポジティブなイメージを持つと答えています。先に述べたような、私の直感に近いものがあるのかもしれません。

 

(3)最後に、「シャイネス」の定義を示して、実際にシャイネスを感じる経験をしたことがあるか、ある場合はどのような経験だったかを尋ねました。その結果、経験があると回答した人の中で多かった記述は、「初対面での会話でうまく話せなかった」「異性とコミュニケーションをとる際にうまく振る舞えなかった」といった対人場面でした。また、数は多くないものの、「仕事で成果を褒められたとき」「ホームランを打って褒められたとき」など、人から褒められた場面を挙げる人もいました。 

 

今回の調査結果は、私たちが2012年に行った同様の調査と共通する点が多くありました。また、シャイネスに対してポジティブな意味をあてる人や、褒められる場面でもシャイネスを感じる人がいたことは興味深いといえると思います。この結果は、おそらく日本において「シャイネス」は西洋のそれとは違うニュアンスをもって捉えられていることを示唆しています。発表にお越しいただいた方のご意見をいただく中で、日本語は時と場合によってポジティブにもネガティブ(皮肉)のどちらにも転びやすいという特徴を持つ言語なのかもしれないと思いました。

 

シャイであるということは、日本人にとっておそらく「ときどき必要」です。レポートをうまく書けて先生から褒められたときに「そうなんです、私は能力が高いですから」と、他の学生の前で言ったらどうなるでしょうか?逆に、会社で新しいプロジェクトのプレゼンをするときに「私はきっとシャイでうまく話せないのですが、始めます」と、上司や社長に向かって言うのは望ましいでしょうか?やはり、人は時と場合によっては「シャイ」に振る舞ったり、あえてそれを隠したりする必要があるはずなのです。謙遜を美徳と感じやすい日本人にとって、「シャイネス」という言葉がどういった意味を持つか、日本人に聞くだけでなく、文化の異なる他国でも同様の調査を行い、比較してみるのも興味深いと思いました。

 

私が2012年に日本グループ・ダイナミックス学会に入会して4年が過ぎました。まだ4年、という気もしますが、2012年は私が韓国に渡った年です。この学会の大会には、帰省中に開かれたものを除き、すべて韓国から行っていたので、海を越えて行かなければならない学会、という「イメージ」が付いている学会でしたが、今年は海を越えるどころか、陸路で行くことができました。イメージと違うことが起こると、不思議な気持ちになるものです。

 

~現代におけるシャイネスのイメージ調査 (2) ――自由記述を中心に――~

(藤井 勉・澤海 崇文・相川 充)

 

(CRET連携研究員 藤井 勉)


稲垣(藤井) 勉 -Tsutomu Inagaki (Fujii)-

CRET連携研究員 鹿児島大学 鹿児島大学学術研究院法文教育学域教育学系 講師

2012年から2016年まで韓国で教育にあたっていました。日本に戻ってからは、車であちこち出かけるのが趣味になりました。

研究テーマ:人の態度や特性(パーソナリティ)を、潜在的測定法などを使って多角的にとらえる研究を続けています。http://pyfpy037.wix.com/tsut0muf

研究発表論文

2016-09-30

教育テスト研究センター年報 第1号 2016年9月

相川 充

赤堀 侃司

柳沢 昌義

加藤 由樹

周村 諭里

加藤 尚吾

竹内 俊彦

舘 秀典

稲垣(藤井) 勉

澤海 崇文

北澤 武

若山 昇

宇宿 公紀

安西 弥生

外山 美樹

湯 立

長峯 聖人

三和 秀平

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CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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コミュニケーション能力、チームワーク能力、ソーシャルスキルなどを測定するテスト方法の研究開発を行う。

相川 充

-Atsushi Aikawa-
筑波大学 人間系
博士(心理学)

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コンピューターベースのテストの基盤研究や、メディアと認知に関わる基礎研究、およびそれらの知見を活かした応用研究および実践研究を行う。

赤堀 侃司

-Kanji Akahori-
東京工業大学 名誉教授

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