CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

日本教育工学会 第33回全国大会 発表報告
「自己の映像を利用した英語プレゼンテーション改善-視聴時の指摘方法の比較」

 2017年9月に島根大学で開催された日本教育工学会第33回全国大会に参加し、「自己の映像を利用した英語プレゼンテーション改善-視聴時の指摘方法の比較」と題して発表を行いました。

 

 学校、ビジネスなど、さまざまな場面でプレゼンテーションを実施する機会があります。より良いプレゼンテーションをするために、プレゼンテーションの様子をビデオ撮影して視聴するという方法が考えられます。撮影した映像を視聴する際に期待される効果にモデリング(Bandura、1969)があります。モデリングとは社会的学習理論の一部であり、他人の様子を見ることで学習することができるという理論のことです。メディアの発達につれ、映像を通じてもモデリングが可能となりました。他人だけでなく自分自身をモデリングする自己モデリング(Dowrick、1983)も可能です。

 

 これまでの研究により、自己の映像を1人で見るよりもペアで視聴する方が様々な面で優れているという事がわかってきました。プレゼンテーションを改善するためにはペアのパートナーによる指摘が助けになるのではないかと考え、本研究では「良かった点」のみを指摘することと「改善点」のみを指摘することを比較することにしました。

 

 大学生60名を良かった点のみを指摘する群(男女各15名)と改善点のみを指摘する群(男女各15名)に分け、全員に英語でプレゼンテーションを行ってもらい、その様子をスマートフォンで撮影したビデオをペアで視聴してもらいました。ビデオ撮影は練習と本番の2回行い、映像視聴後はプレゼンテーションを18項目について各自自己評価してもらいました。

 

 結果として、良かった点のみを指摘する群の方がいくつかの項目において有意に自己評価が高くなりました。また、練習よりも本番の方が自己評価が高い項目が増えました。自由記述のアンケートも総合して考えてみると、おそらく、良かった点を指摘することと改善点を指摘することは目的と結果が異なるのではないかと思われます。良かった点を指摘されると褒められた気分になり、自信が付くのではないかという事と、改善点はプレゼンテーションそのものに対するものであり、指摘されても自信などの感情には働きかけないのではないかという事です。むしろ、他人から改善点を指摘されて嫌な気分になる人もいます。また、おそらく日本で生活している人の特質かと思われますが、他人の改善点は言いにくいようです。

 

 より良いプレゼンテーションをするためには、自信を持って堂々と発表すること、および自分のプレゼンテーションの改善点に気付き、修正していくことが必要だと思われます。今後の課題としては、両者をいかにフィードバックしていくか、その方法や内容を検討していきたいと思います。

 

 最後に、本大会では多くの先生方だけでなく、他業種の方からもアドバイスをいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

(CRET連携研究員 小林 輝美)


小林 輝美 -Terumi Kobayashi-

CRET連携研究員、杏林大学外国語学部講師

趣味:ラクロス、海外ドラマ/映画鑑賞など。

映像を通じた自己/他者モデリング、児童英語教育に最も関心があります。

研究発表論文

CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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