CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

日本社会心理学会第59回大会 発表報告
~潜在的自尊心を測定する尺度間の相関関係の検討~

追手門学院大学にて、2018年8月28日から29日にかけて開催された日本社会心理学会第59回大会に参加して発表を行ってまいりました。ちょうど東京の悪天候を避けるかたちで関西に逃げることができましたが、真夏かと思わせるくらいの暑さで、会場にたどり着くまでは大変でした。

 

本大会の会場は最寄り駅からバスを利用しなければ行けない場所にあり、途中でキャンパス外に出ることが難しく、二日間を通してずっと会場にいたので、多くの研究発表を聴くことができました。今回は特にワークショップに集中して参加して、様々な研究分野のお話を聞きましたが、以下では一つだけ紹介したいと思います。

 

非言語研究についてのワークショップが大変興味深く、印象に残っております。一般的なイメージとして「非言語研究は4K」という言葉を企画者の先生が強調されていて、4Kとは (a) 気が引ける (b) きつい (データのコーディングの段階など) (c) 結果が不安定 (データをコーディングする人の間での判断一致率の低さなど) (d) 結果が面白くない (結果が当たり前に見える) を指します。そのような特徴に対し、どのように解決していけばよいのか、企画者の先生を含め、登壇者の先生方が非常に熱く、熱意を持って語っておられたのが印象的でした。研究というのはたしかにきつく感じる時もあったり、結果が不安定で再現されずに意気消沈したりすることも多々ありますが、諦めずに研究を続ければよい結果が産まれることもあると、勇気をもらえたようなワークショップでした。

 

さて、私はCRET相川研として実施した研究(潜在的自尊心を測定する尺度間の相関関係の検討)を29日に発表しました。ポスター発表を行い、自尊心の研究という枠組みで発表したためか、非常に多くの学会参加者が聞きに来てくださいました。

 

発表内容を以下簡単に述べます。自分に対するポジティブな態度のことを心理学では自尊心と呼び、伝統的には質問紙を用いて「私は自分がたくさんよい性質をもっていると感じている」のような項目に対して「当てはまる-当てはまらない」といった形式で回答していくやり方が取られていました。そのような流れの中で、近年はPCを利用し、自分では意識できないとされる自尊心(潜在的自尊心と呼ばれています)を測定するテストが開発され、その種のテストを用いた研究が盛んに行われています。その他にも、各アルファベットへの好みを回答するだけで当人の潜在的自尊心が測定されるといった研究や、自分自身の名前の好みが潜在的自尊心を反映しているといった研究もなされており、海外においてはこれらのテスト間の関係性が検討されています。しかし、日本においてはこれらのテスト3種の関係性を扱った研究は未だ実施されておりません。そこで、本研究ではこの3種のテストを日本人参加者に行ってもらい、それらの関係を検討することを目的としました。

 

データ分析の結果、本研究では海外で見られたパターンとは異なる様相が観測されました。海外では3種のテストの間に正の関連(あるテスト得点が高い人ほど別のテスト得点も高い傾向)が見られていますが、本研究ではそのような関係性は観測されませんでした。このような結果になった1つの可能性として、名前に対する愛着や思い入れの強さの文化差が挙げられ、日本人は自分の名前にそこまで強い愛着を抱いていないのではないかという点が指摘できます。このような考えは、発表を聴きにいらした研究者の方々も同意してくださいました。

 

本学会は知り合いの研究者が多く、1日目の総会にて、私が大学院生の頃の所属先の先生や大学院生の方々が著書や論文で受賞していた(総なめにしていました)のを目にして、私も著書や論文を発表して、学会発表だけで満足せずにしっかりとした形に残さなければならないと奮起させられた学会でした。

 

~潜在的自尊心を測定する尺度間の相関関係の検討~

(澤海 崇文・稲垣 勉・相川 充)

 

(CRET連携研究員 澤海 崇文)


澤海 崇文 -Takafumi Sawaumi-

CRET連携研究員、流通経済大学 社会学部 助教

趣味: テニスやヨガなどで定期的に体を動かすようにしています。語学学習にも励み、海外旅行も人生の楽しみの一つです。

研究テーマ:対人コミュニケーションやパーソナリティに興味があり、それらの比較文化研究が専門です。

研究発表論文

Reasearch label
2018-03-02

19thAnnual Meeting of the Society for Personality and Social Psychology 発表報告

外山 美樹

湯 立

長峯 聖人

三和 秀平

CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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コミュニケーション能力、チームワーク能力、ソーシャルスキルなどを測定するテスト方法の研究開発を行う。

相川 充

-Atsushi Aikawa-
筑波大学 人間系
博士(心理学)

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コンピューターベースのテストの基盤研究や、メディアと認知に関わる基礎研究、およびそれらの知見を活かした応用研究および実践研究を行う。

赤堀 侃司

-Kanji Akahori-
東京工業大学 名誉教授

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