CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

日本心理学会第83回大会 発表報告

2019年9月11~13日にかけ,大阪の立命館大学茨木キャンパスで「日本心理学会第83回大会」が開催され,相川研外山班の外山研究員,三和研究員,湯研究員,長峯研究員と肖が出席しました。

 

大会では,心理学の各分野または隣接分野の研究者や実践家が一堂に会し,最新の知見を共有する講演,シンポジウムやポスター発表などが行われました。今年度の日本心理学会大会は,「心理学がつなぐ世界」をテーマに掲げ,地球規模の「世界」だけでなく,学術界・産業界・地域等,私たちの身の回りにある様々な「世界」をよくするために心理学ができることを考える機会を意味しているようで,大勢の国内外の関係者が参加していました。

 

相川研外山班は,今年度に行った4つの研究について発表を行いました。

3日間にわたる本大会1日目の11日は,外山研究員が「制御焦点が創造的パフォーマンスに及ぼす影響―課題への自我関与に注目して―」,三和研究員が「基本的心理欲求支援が欲求充足を介して友人関係に及ぼす影響―制御焦点に着目して―」についてそれぞれ発表を行いました。外山研究員の研究では,今まで創造的パフォーマンスが比較的低いとされてきた防止焦点の高い個人に着目し,課題の重要性が高い場合はそうでない場合より創造的パフォーマンスが高まることが示されました。1日目の早めの時間帯の発表にもかかわらず,途切れることなく多くの方にお越しいただきました。三和研究員の研究は,個人の制御焦点と提供される支援行動の種類との組み合わせが提供者との関係に対する評価に及ぼす影響を検討したものでした。この研究において,防止焦点の高い個人が関係性に関わる支援を受けた際に,関係性の欲求が充足され,その結果関係満足度が高くなることが明らかになりました。三和研究員の発表は,動機づけやソーシャルサポートといった多様な研究分野の方が聞きに来てくださり,意見交換が活発に行われました。

 

2日目の12日は,湯研究員が「難しい学習場面における動機づけ調整方略の使用とエンゲージメントとの関連―制御適合の役割―」について発表を行いました。この研究は,やる気の低い場面において,学習者が使用する動機づけ調整方略の効果が学習者の制御焦点によって異なるかどうかを検討したものでした。検討の結果,促進焦点の高い個人には,自己効力感高揚方略(自己を高揚するような方略)がより有効である一方,防止焦点の高い個人には,義務強調方略(自分の義務を意識するような方略)がより有効であることが示されました。湯研究員の発表は,日本国内のみならず,海外の研究者もいらっしゃいました。

 

私の発表,「課題学習における欲求支援行動の効果は制御焦点によって調整されるか」は,2日目に行いました。本発表では,学習者の制御焦点の傾向に合致した支援行動(本研究では,自律性支援か関係性支援か)を提供することで,課題への理解度やパフォーマンスが上がるかどうかを検討するものでした。その結果,防止焦点に比べて促進焦点の高い個人に自律性支援を行うことで課題への理解度が高くなることが示されました。本研究の結果より,学習者の特性に合わせた支援を提供することの有用性が一部示されたと言えます。発表では,教育系の研究者の他,現場の先生方も聞きに来てくださり,制御焦点理論ならびに制御適合理論に興味を示してくださったうえでこの理論の現場での有用性を評価していただきました。また,本発表における,効果の測定に使用される指標,課題の選定および現実場面における応用などについて,先生方と議論を行いました。議論の内容を踏まえ,今回発表した内容の中で明らかにされていなかった部分を,より洗練化した実験によって今後検討していきたいと考えました。さらに,実験室実験に留まらず,現実の学習場面における検討も非常に重要であると改めて思いましたので,今後の課題としたいと考えております。

 

今回の大会では,ポスター発表を通して,発表を聞きにきてくださった一人一人の参加者と深い議論をすることができ,有意義な時間を過ごすことができました。制御焦点理論に興味を持って聞きにきてくださった方も多く,制御焦点の理論の解説を求められることも多々ありました。これは,我々がこれまで多くの研究成果を報告し続けてきたからだと考えております。制御焦点理論に基づいた研究を発信し続けていることで,CRETの知名度が徐々に上がっていることを,今回の学会を通して感じました。

 

社会において心理学が役立つ場面は多く存在します。今後も,現場への応用性が高い研究に注力し,その成果を学会で発信し続けていきたいと思います。

 

 

(CRET連携研究員 肖 雨知)

 

 

 

書誌情報(発表時間順):

三和 秀平・外山 美樹・肖 雨知・長峯 聖人・湯 立・相川 充(2019).基本的心理欲求支援が欲求充足を介して友人関係評価に及ぼす影響―制御焦点に着目して―.日本心理学会第83回大会発表論文集,709.

 

外山 美樹・湯 立・長峯 聖人・肖 雨知・三和 秀平・海沼 亮・相川 充(2019).制御焦点が創造的パフォーマンスに及ぼす影響―課題への自我関与に注目して―.日本心理学会第83回大会発表論文集,713.

 

湯 立・外山 美樹・三和 秀平・長峯 聖人・肖 雨知・相川 充(2019).難しい学習場面における動機づけ調整方略の使用とエンゲージメントとの関連―制御適合の役割―.日本心理学会第83回大会発表論文集,921.

 

肖 雨知・外山 美樹・長峯 聖人・三和 秀平・湯 立・相川 充(2019).課題学習における欲求支援行動の効果は制御焦点によって調整されるか? 日本心理学会第83回大会発表論文集,922.


肖 雨知 -Xiao Yuzhi-

CRET連携研究員 / 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 博士後期課程

趣味:人とコミュニケーションをとることが大好きです。休みの日は読書や映画鑑賞をよくします。

研究テーマ:社会的文脈,対人行動が人に及ぼす影響について研究しています。

研究発表論文

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CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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コミュニケーション能力、チームワーク能力、ソーシャルスキルなどを測定するテスト方法の研究開発を行う。

相川 充

-Atsushi Aikawa-
筑波大学 人間系
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赤堀 侃司

-Kanji Akahori-
東京工業大学 名誉教授

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