CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

3rd International Conference of Social sciences, Humanity, and Education (ICSHE) 発表報告
Is prevention focus less effective for performance? (防止焦点はパフォーマンスに対して効果的ではないのか?)
Message order effect in the context of multiple messages in Japan (複数のメッセージがある文脈におけるメッセージ提示順序効果――日本における検討――)

2020年3月6日から8日に,ハンガリーのブダペストで開催された3rd International Conference of Social sciences, Humanity, and Education (ICSHE)へ外山研究員と長峯が参加し,研究発表を行ってきました。

 

今回は,新型コロナウイルスが世界的に蔓延している状況で色々と懸念もありましたが,ハンガリーでは特別その件に関わるトラブルは少なく,終始安全に過ごすことができました。日本とは打って変わって何事もないような街中の風景は,感染者数が非常に少ない(渡航時点で4人)ということもあったかもしれませんが,親切で穏やかなハンガリー人の気風が関連していたのかもしれません。学会中は天気に恵まれ,3月上旬とはいえ気温も温かったです。現地の人いわく,昔と比べ現在のハンガリー(特にブダペスト)は冬に雪を見ることも少なくなったとのことです。そのためか非常に過ごしやすく,ヨーロッパ特有の古い石造りの街が美しく佇む様子を堪能することができました。

 

今回参加したICSHEは様々なジャンルの研究者が参加するものでしたが,規模としては比較的小さかったこともあり,学会はブダペストの中心にほど近いホテル(Hotel memories Budapest)にて行われました。この場所はブダペストの名所である鎖橋に近いところにあり,会場の周囲は多くの人が行き交っていました。今回,外山研究員と私はいずれも7日(金)に発表を行いました。発表内容は,外山研究員が「防止焦点はパフォーマンスに対して効果的ではないのか?」という内容で,長峯は「複数のメッセージがある文脈におけるメッセージ提示順序効果――日本における検討――」というものでした。

 

今年度より我々外山班は,従来着目してきた「制御焦点」という枠組みを踏襲しつつも,より広範な観点から「動機づけやパフォーマンスにつながる,個人に合った適切な働きかけや環境の設定」を検討することを目的とし,研究を行っております。今回の3rd ICSHEでは,外山研究員が制御焦点の観点から「パフォーマンスの重要性を強調することの影響」について,長峯が説得研究の観点から「メッセージの提示順序が対象への価値づけに及ぼす影響」について検討した研究を発表しました。外山研究員の発表では,防止焦点が促進焦点よりもパフォーマンスが低いという結果は,教示された課題の重要性によって異なることが明らかになりました。このことは,従来言われてきたように,促進焦点と防止焦点はどちらかが優れているというわけではなく,それぞれに合った環境を設定することが重要であるということを示しています。また,長峯の発表では,「一般的に,先に専門性の高い(低い)メッセージが提示された場合,後に提示されたメッセージが低く(高く)評価される」という欧米の先行研究の結果が,日本人では再現されないことが明らかになりました。このことは,同じメッセージでも提示する順序が変わるだけで評価が異なってしまうというメッセージ提示順序効果には,その影響を調整する別の要因が関わっている可能性があることを示しています。この発表の内容を拡張し,メッセージ提示順序効果において制御焦点が調整要因となることを示した研究を今年度に実施済みであり,現在は内容を論文化し国内の学術誌に投稿中です。

 

昨年度のICPS2019と比べると参加者の全体数は少なかったですが,それでもポスターには多くの方が興味を持って来てくれました。今回は社会科学全般を対象とした学会だったため,心理学以外にも,教育学,社会学といった他領域の方が参加しており,多様な知見を得ることができました。そのため,自身のポスター発表だけでなく,他の研究者の発表からも心理学の領域ではなかなか得ることのできないような興味深い内容にも触れることができました。全体的には教育学を専門とした研究者,特に子どもを対象とした研究者が多かったので,今回の学会参加で得られた知識や洞察を外山班のメンバーと共有し,今後の研究に活かしていきたいと感じました。特に,今年度からは各成員の強みを生かし,制御焦点の枠にとらわれない多様な観点からの検討を行う方針を取ることとしたため,来年度以降はそれらを統合的に解釈することの出来る全体像をまとめられるよう努めていきたいと考えています。

 

Is prevention focus less effective for performance?

  (Toyama, M., Nagamine, M., Tang., L., Miwa, S., & Aikawa, A.)

Message order effect in the context of multiple messages in Japan

 (Nagamine, M., Toyama, M., Tang., L., Miwa, S., & Aikawa, A.)

 

 

(CRET連携研究員 長峯 聖人)


長峯 聖人 -Masato Nagamine-

CRET連携研究員 筑波大学人間総合科学研究科博士前期課程

趣味:散歩(天気が良い日)、ボードゲーム(主にドイツ製)

研究テーマ:対人関係、感情的動機づけ

研究発表論文

2019-07-19

教育テスト研究センター年報 第4号 2019年7月

相川 充

赤堀 侃司

加藤 由樹

加藤 尚吾

竹内 俊彦

稲垣(藤井) 勉

澤海 崇文

北澤 武

若山 昇

宇宿 公紀

安西 弥生

外山 美樹

小林 輝美

湯 立

長峯 聖人

三和 秀平

酒井 智弘

肖 雨知

海沼 亮

能渡 真澄

CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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コミュニケーション能力、チームワーク能力、ソーシャルスキルなどを測定するテスト方法の研究開発を行う。

相川 充

-Atsushi Aikawa-
筑波大学 人間系
博士(心理学)

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コンピューターベースのテストの基盤研究や、メディアと認知に関わる基礎研究、およびそれらの知見を活かした応用研究および実践研究を行う。

赤堀 侃司

-Kanji Akahori-
東京工業大学 名誉教授

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