CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

日本教育心理学会第62回総会 発表報告
「防止焦点はパフォーマンスが低いのか?―課題の重要性に着目して―」

日本教育心理学会第62回総会は,2020年9月19日(土)から21日(月)にかけて,静岡県浜松市のアクトシティ浜松で開催される予定でした。これまで日本教育心理学会の総会は,開催担当校が決まっていたのですが,今年度より開催担当校を置かず,新たに設置された総会企画委員会でシンポジウム等の企画を行うことになっており,新たなやり方での研究交流を非常に楽しみにしておりました。しかし,ご存知の通り,新型コロナウイルスの感染拡大の状況に鑑み,日本教育心理学会の総会においても例外ではなく,参集しての総会開催は行わず,ポスター発表をWebおよびJ-Stageに掲載することによって,開催に代えることとなりました。

 

私は,長峯研究員・海沼研究員・湯研究員・三和研究員・相川理事と連名で「防止焦点はパフォーマンスが低いのか?―課題の重要性に着目して―」というタイトルで発表を行いました。動機づけ研究の分野においては,制御焦点,制御適合について精力的に研究が行われています。私たち外山班では,この「制御焦点」という目標追求の個人差に着目し,特定の個人差を持つ子どもに対してどのように働きかけを行ったり,環境を整えたりすることが学業に対するモチベーションや学業成績の向上につながるのかを明らかにすることを目的とした研究をこれまで行ってきました。今回発表した研究は,特に,防止焦点に着目し,異なる観点からどのような要因がパフォーマンスやモチベーションに影響を与えるのかを検討したものでした。

 

制御焦点とパフォーマンスの関連を検討した研究は,それほど多くないのですが,数少ない研究では,課題のタイプによってどちらのパフォーマンスが優位となるのかが異なることが示されています。また,近年では,文脈を加味した検討が行われており,どのような文脈であったら,促進焦点あるいは防止焦点のパフォーマンスが優位になるのかが明らかになっています。本研究では,促進焦点と防止焦点でパフォーマンスに差が見られない課題(計算課題)を用いて,先行課題の重要性を操作した後の制御焦点(促進焦点,防止焦点)のパフォーマンスについて検討することを目的としました。その結果,防止焦点は課題の重要性の程度によって,課題に投入する努力を変えることが示されました。前に実施しました研究(外山他,2019)では,防止焦点が活性化されると,課題の重要性が低い場合,認知資源を温存しようとする意図が働くことが明らかにされましたが,その課題では力を抜くが,温存した認知資源を後続課題に対して捧げることが可能となるため,そこでは最大限のパフォーマンスを発揮することができるものと考えられました。

 

先にも述べました通り,今回の学会は,ポスター発表の要旨集をWebおよびJ-Stageに掲載するのみであり,学会員との交流がありませんでした。非常に残念なことでありますが,来年度は岩手県の盛岡市で総会が開催されることが決定しており,来年度はシンポジウムでも開催しようかと思案しているところです。制御焦点の研究は,まだまだ残されている課題も多く,その課題を1つ1つクリアしながら,実践に役立つ知見を提供すべき,今後の研究を進めていきたいと考えています。

  

(CRET連携研究員 外山 美樹)

 

 

外山 美樹・長峯 聖人・海沼 亮・湯 立・三和 秀平・相川充 (2020). 防止焦点はパフォーマンスが低いのか?-課題の重要性に着目して- 日本教育心理学会第62回総会発表論文集, 239.


外山 美樹 -Miki Toyama-

CRET連携研究員 筑波大学 人間系 准教授

趣味: 育児、旅行(温泉めぐり)

研究テーマ: 自己認知が動機づけやパフォーマンス、精神的健康にどのように影響をするのかを研究しています。
http://www.u.tsukuba.ac.jp/~toyama.miki.ga/index.html

研究発表論文

CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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