CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

日本教育工学会研究会 発表報告
~マンガ教材における紙とデジタルのメディア比較~

 2010年12月18日に大分大学旦野原キャンパスで開催された、日本教育工学会研究会(ICTを活用したFDと大学・高大連携/一般)に参加し、「マンガ教材における紙とデジタルのメディア比較」を発表しました。

 筆者は、既存の教育マンガをデジタル教材として利用するために、マンガのコマ割りを認識するソフトの開発を計画しています。本研究は、ソフト開発の前段階として、コマ割りしたデジタル教材と紙のマンガ教材に差異があるかを調査したものです。具体的には大学生を対象に、映画史に関するマンガ教材を紙のまま配布した紙群(20名)と、Power Pointファイル化し、エンターキーを押すごとに1コマずつ表示させる教材で学ぶデジタル群(20名)の2群に分けて実験を行い、成績や読み終えるまでの時間、印象などを比較しました。

 研究仮説は、[1]紙のマンガのほうが速く読める、[2]映画史の知識を問う試験の成績は1コマずつ時間をかけて読んだデジタル群のほうが良い、[3] マンガの登場人物などに関する設問の得点は大差ない、[4]紙のマンガのほうが読みやすいと被験者は感じる、というものです。 

 実験の結果、[1]には有意差がありました。つまりマンガを読む時間は、デジタル群のほうが、紙群よりも1.5倍の時間がかかっていました(1%有意)。これは、デジタル群は1コマずつエンターキーで読み進める必要がある分、時間がかかったものと思われます。[2]に関しては、映画史に関する成績には、30点満点でデジタル群は22.8点、紙群は20.6点と、デジタル群のほうがやや成績が良く、弱い有意傾向がありました。デジタル群では、1コマずつに分けられている分、マンガでは時間をかけてじっくり読むことを強制されるせいではないか、と考えられます。[3]に関しては事前の予想に反しました。マンガのキャラクターに関する設問については、デジタル群は4.85点、紙群は3.70点と、デジタル群のほうが成績が良い(5%有意)という結果になりました。これも、デジタル教材では1コマずつ読むようにしたため、時間をかけて読んだ効果が大きいと考えています。[4] に関しては、Q40「Power Pointマンガ教材のほうが、紙のマンガ教材より読みやすいと思う」というアンケート設問について、群間に有意差はなかったことから、デジタル群と紙群に、特に読みやすさの差はなかったと結論しました。

 本研究会は全国大会の直後ということもあり、通常よりも発表件数が少なく、また、2会場で同時開催でした。実は本会場の参加者はわずかで、もう一方の会場では、マンガに関する研究が連続して発表されており、そちらの方が大盛況でした。この研究会では、他にも、電子教科書に関する研究も数多く発表され、今後の教育・学習環境についての深い議論がなされ、研究のヒントを大いに得ることができました。

 以上から、マンガをデジタル化し、1コマずつ読ませることは、じっくり時間をかけて読ませる分、教育効果が高まると期待して良さそうであり、マンガのコマごとの切り分け機能を開発する価値があるという結論に至りました。

 発表した会場からは、「紙群とコマ割りしたデジタル群の比較ではなく、コマ割りしないデジタル教材と、コマ割りしたデジタル教材で比較すべきではないか」という質問が複数あり、次回の実験で対応する予定であると説明しました。
 他の発表に関しては、森裕生氏、尾澤重知氏の「iPodと写真共有アプリを用いた学生間ノート共有の試み」が興味深いと感じました。学生に自分のノートを撮影させ、ポートフォリオとして蓄積し、後にiPodで振り返りを行うというものです。

竹内俊彦(2010). マンガ教材における紙とデジタルのメディア比較, 
日本教育工学会研究報告集, JSET10-4, pp.67-70.

pdf 論文PDF(1.3MB)

(CRET連携研究員 竹内 俊彦)

竹内 俊彦 -Toshihiko Takeuchi-

CRET連携研究員、駿河台大学 メディア情報学部 准教授

趣味: マンガ、読書、クイズ作成

研究テーマ: マルチメディアを利用したテストや教材の開発

研究発表論文

CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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