CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

日本教育工学会研究会 発表報告
~CBTにおける問題提示の一覧性に注目した比較~

2012年3月3日に山口大学・吉田キャンパスにて開催された日本教育工学会研究会で口頭発表をしました。以下、報告内容と質疑・感想などを紹介いたします。

 

 近い将来には、コンピュータベースの試験(CBT)がさまざまな場面で導入されると考えられます。CBTでは、従来の紙と鉛筆による試験とは異なる問題提示や解答の仕方が可能になります。そのため、今までの紙と鉛筆の試験とコンピュータを用いた試験とを比較し、メディアの影響を調べる研究は不可欠であると考えます。

 

 教育テスト研究センター(CRET)の研究の中に、試験における問題提示および解答記入のメディアとして、デジタルペン、タブレットPC、PC、紙と鉛筆の4種類を比較した先行研究があります(加藤ほか, 2010)。この先行研究では、被験者96名をそれぞれのメディアを用いて試験問題を解答する4群に人数・性別ともにほぼ均等になるように分け、群間で試験の成績等を比較しました。

この結果、(1)紙の問題文(文章問題の文章など)があり、別に紙の解答用紙があるもの(すなわち、紙と鉛筆を使用した群およびデジタルペンを使用した群)と、(2)PCのディスプレイに問題文に続いて解答フォームがあるもの(タブレットPCを使用した群およびPCを使用した群)の間に、成績に差がありました。

その差は、問題文を参照しながら抜き出したりまとめたりすることを求めた問題で見られ、(2)で点数が低いことが示されました。この差について、加藤ほか(2010)は、問題を一覧的に見られるかどうかによる影響の可能性を指摘しました。

 

 上記の先行研究をうけて、本研究ではCBTにおける問題の一覧性に注目した実験を行いました。具体的には、以下の3つに群分けをして試験を行い、それぞれの成績を比較しました:

(1)PCを1台使用し、従来のように、1つのディスプレイで問題文、設問、解答フォームの順番に提示する群、

(2)PCを1台使用し、紙で問題文を提示し、PCのディスプレイに設問と解答フォームを提示する群、

(3)iPad及びPCを使用し、iPadのディスプレイには問題文、PCのディスプレイには設問と解答フォームを提示する群。

 これら3群の比較の結果,試験の点数には群間で差は見られませんでした。すなわち、得られた結果から、一覧性が試験の点数に影響を与えたとは言えませんでした。一方、アンケート結果からは、いくつか示唆されることがありました。アンケート結果を概観しますと、ディスプレイ紙群(上記の(2)の群)の被験者は、解答の記入をしにくく、イライラして集中できず、実力を発揮できなかったとより感じていたと読み取れました。すなわち、紙で問題文を提示され解答をディスプレイで行う方法は、被験者に煩わしさを与えたと推察されます。この煩わしさの要因として、限られたスペースである机の上で、紙をめくる動作と、画面をスクロールしキーボードを打つ動作が混在していることがあると考えられます。この点について、今後さらなる検討を重ねていきたいと考えています。更に、もう1点、今後注目していきたい点がありました。それは、iPad群(上記の(3)の群)では、論述問題の中で特に受験者自身の意見を述べる問題において、他の2群と比べて文字数が突出していたことです。この点についても、iPadという新しいメディアの特性・影響によるものなのかを継続的に探っていきたいと考えています。

 

 発表の会場では、メディア比較やCBTに興味を持たれた多くの研究者の方から、さまざまなご意見・ご質問をいただきました。特に、上述したようなメディアの混在の影響やiPadの特性、そしてCBTで一覧性を保証するための問題提示の方法の工夫など、今後の詳細な実験、研究を期待されるコメントを多くいただきました。いただきましたコメントを参考に、継続的に研究をしていきます。

 

 

加藤尚吾,加藤由樹 (2012). CBTにおける問題提示の一覧性に注目した比較.

日本教育工学会研究会報告集,JSET12-1, pp.195-198. pdf 論文PDF(228KB)

 

(CRET連携研究員 加藤 由樹)


加藤 由樹 -Yuuki Kato-

CRET連携研究員、相模女子大学 学芸学部 准教授

趣味: 移動中の読書と夕食後の映画鑑賞、旅先での写真撮影
テキストコミュニケーションの奥深さについて興味を持っています。
紹介Webサイト:http://www.sagami-wu.ac.jp/faculty/arts_sciences/media/teacher/details/kato_yuuki.html

研究発表論文

2016-09-30

教育テスト研究センター年報 第1号 2016年9月

相川 充

赤堀 侃司

柳沢 昌義

加藤 由樹

周村 諭里

加藤 尚吾

竹内 俊彦

舘 秀典

稲垣(藤井) 勉

澤海 崇文

北澤 武

若山 昇

宇宿 公紀

安西 弥生

外山 美樹

湯 立

長峯 聖人

三和 秀平

CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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コミュニケーション能力、チームワーク能力、ソーシャルスキルなどを測定するテスト方法の研究開発を行う。

相川 充

-Atsushi Aikawa-
筑波大学 人間系
博士(心理学)

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コンピューターベースのテストの基盤研究や、メディアと認知に関わる基礎研究、およびそれらの知見を活かした応用研究および実践研究を行う。

赤堀 侃司

-Kanji Akahori-
東京工業大学 名誉教授

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