CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

日本教育工学会 研究会(ICT を活用した教育実践と授業改善/一般)発表報告
「タブレット端末を活用したテストの出題形式が動機づけに与える影響
―大学生のテスト接近・回避傾向に着目して―」

 2013年3月2日に、三重大学教育学部専門校舎1号館で開催された日本教育工学会研究会に参加し、「タブレット端末を活用したテストの出題形式が動機づけに与える影響―大学生のテスト接近・回避傾向に着目して―」と題して発表を行いました。

 

 本研究の背景として、高等学校の教科「情報」の必修化に伴い、年々、新入生の情報に関するスキルが変容していることから、大学における情報教育の授業改善が求められていることと、FD(Faculty Development)の義務化により、大学では授業時間外学習の促進や学生の学力向上や知識定着を目指した授業改善が求められていることが挙げられます。

 上記の課題を解決するために、大学情報教育で取り組まれていることの一つとして、対面授業とeラーニングシステムを融合した「ブレンディッドラーニング(Blended Learning)」がありますが、この問題点として、PCを活用したeラーニングシステムによる授業時間外学習の持続と知識定着が困難であることが指摘されています。そのため、昨今、携帯が容易でいつでもどこでもインターネットにアクセス可能なタブレット端末を活用したモバイルラーニングが注目されていますが、これについて、学習者の認知負荷が低いコンテンツの検討が求められています。

 また、知識定着の側面として、先行研究よりテストの実施が提唱されていますが、タブレット端末において、学習者の負荷が低く、意欲的に取り組めるテスト形式の検討が求められています。

 そこで本研究では、大学情報基礎科目を対象に、対面授業とmラーニングシステムを融合させたブレンディッドラーニング環境において、タブレット端末を利用した授業時間外におけるテスト配信と、自主的なテストの実施場面を想定した実験環境を構築しました。そして、テスト接近・回避傾向による、テストの出題形式などに対する認識の差異を動機づけなどの観点から追究することを目的としました。

 

  テストによる知識定着を図るためには、先行研究より、学生のテスト観(テスト接近・回避傾向)に着目することが重要であることから、学生のテスト接近・回避傾向と関連させて分析を行いました。

  事前調査としてテスト接近・回避傾向を調査した後、各大学の初年次に開講されている情報基礎科目を想定し、情報科学概論の講義を実施しました。次に、タブレット端末(iPad(第3世代))による「多肢選択」、「穴埋め」、「多肢選択と穴埋めの混合」のテストに取り組んでもらい、テスト接近・回避傾向による差異を分析しました。事後調査は、テストの動機づけとして、「テスト負荷」、「テストに対する意欲」、「自己効力感」(全20問,5件法)に関する質問紙調査を実施しました。

 

  欠損値2名を除く58名を対象に分析した結果、テスト接近傾向の学生は29名、テスト回避傾向の学生は29名存在しました。各テスト形式による正答率の平均値は、多肢選択は79.3%、多肢選択・穴埋めの混合は75.3%、穴埋めは55.3%でした。分散分析の結果、穴埋め形式の正答率の平均値は他のテスト形式より有意に低く、多肢選択と混合には有意差が認められませんでした。

  また、事後調査の結果、テスト接近・回避傾向に関わらず、多肢選択は、解く負担が軽く、意欲的、継続的に取り組む認識が高いが、知識定着や理解度に対する認識は低いと認識していることが分かりました。また、穴埋めについては、知識定着や理解度に対する認識は高いが、解く負担が大きいという認識であることが分かりました。更に、多肢選択と穴埋めの混合については、解く負担が軽く、意欲的、継続的に取り組むという認識が高く、かつ、知識定着や理解度に対する認識も高いことが分かりました。

  以上の結果から、タブレット端末を活用したテスト形式について、多肢選択、穴埋め、多肢選択と穴埋めの混合の3つにおいて、多肢選択と穴埋めの混合形式がテストの継続性や知識定着において、効果が期待できることが示唆されました。

 

  今後の課題として、1)妥当な問題数の検討、2)スマートフォンとタブレット端末の比較、3)実際の授業を対象とした長期的な調査などが挙げられます。

 

  最後に、本研究会では多くの先生方からアドバイスをいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

「タブレット端末を活用したテストの出題形式が動機づけに与える影響 ―大学生のテスト接近・回避傾向に着目して―」(北澤 武)

 

(CRET連携研究員 北澤 武)


北澤 武 -Takeshi Kitazawa-

CRET連携研究員、東京学芸大学 教職大学院 教育実践創成講座 准教授

趣味: 旅行、水泳、下町散策など。

研究テーマ:ICT を活用した教育効果、ICT 活用指導力に着目した研究を行っています。

研究発表論文

2019-07-19

教育テスト研究センター年報 第4号 2019年7月

相川 充

赤堀 侃司

加藤 由樹

加藤 尚吾

竹内 俊彦

稲垣(藤井) 勉

澤海 崇文

北澤 武

若山 昇

宇宿 公紀

安西 弥生

外山 美樹

小林 輝美

湯 立

長峯 聖人

三和 秀平

酒井 智弘

肖 雨知

海沼 亮

能渡 真澄

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CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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コミュニケーション能力、チームワーク能力、ソーシャルスキルなどを測定するテスト方法の研究開発を行う。

相川 充

-Atsushi Aikawa-
筑波大学 人間系
博士(心理学)

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コンピューターベースのテストの基盤研究や、メディアと認知に関わる基礎研究、およびそれらの知見を活かした応用研究および実践研究を行う。

赤堀 侃司

-Kanji Akahori-
東京工業大学 名誉教授

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