CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

The Joint SELF Biennial International Conference and Educational Research Association of Singapore (ERAS) Conference発表報告

~Relations of Explicit/Implicit Shyness With Other Individual Differences: Implication for Adaptive Values of Shyness(顕在的および潜在的シャイネスと他個人特性との関連―シャイネスの適応的側面の示唆―)~

 シンガポールの南洋女子中学校にて、2013年9月9日から11日にかけて開催されたThe Joint SELF Biennial International Conference and Educational Research Association of Singapore (ERAS) Conferenceに、連携研究員の藤井研究員と参加しました。

 

 シンガポールは熱帯雨林気候に属しており、1年を通して高温多湿な地域です。それ相応の服装を準備していきましたが、予想していたよりも暑苦しいとは感じませんでした。むしろ東京の夏の方が私にとっては酷暑に感じられました。ただ、屋内では強力な冷房が効いているため、その温度差には気をつけなければなりません。ある程度気をつけていたつもりですが、滞在中の後半は少し体調を崩してしまいました。

 シンガポールという国について下調べをしてあったので心構えはできていたのですが、それでもやはりシンガポールは非常に多くの文化が共存しているという事実に驚かされました。民族や宗教や言語という点で複数のカテゴリーが存在しています。公用語は英語、マレー語、中国語、タミル語なので、普段の生活の中でもその4つの言語が共存していることを感じ取ることができます。例えば、地下鉄での行き先案内ではその4つの言語が並列されて書かれているということも見受けられました。幸い、私は中国語を少々使えるので、タクシーでの移動や食事の注文の際には英語と中国語を混ぜて使うということも少なくなかったです。

 

 さて、私と藤井研究員はそれぞれ、CRETから補助を受けて実施した2つの研究(顕在的および潜在的シャイネスと他個人特性との関連―シャイネスの適応的側面の示唆―、潜在的シャイネスや顕在的シャイネスは社会的経験の影響を受けるのか?)を発表しました。私は口頭発表を選択しましたが、英語での口頭発表は先月に別件で行っており、いくらか英語モードにシフトしていたため、今回もとてもスムーズに進めることができました。

 具体的な発表内容として、伝統的な尺度を用いて測定されたシャイネス(顕在的シャイネス)に加えて、潜在的な概念を測定する潜在連合テストと呼ばれる手法を用い、意識できないレベルにおいて存在するシャイネス(潜在的シャイネス)を測定し、それらと他の個人特性(攻撃性、孤独感、主観的幸福感)との関連を検討しました。

 シャイネスは伝統的には不適応的な側面を抱えていると言われていました。例えば、シャイな人は対人コミュニケーションにおいて上手に発言できなかったり、他者から拒否されるのを必要以上に恐れたりする傾向があると言われています。しかし、ここでのシャイネスというのは尺度によって測定されたもの、つまり人が意識できるレベルでのシャイネスです。そこで、本研究では、我々の研究チームが長い間取り組んでいる潜在連合テストを用い、人が意識することの難しいレベルでの潜在的シャイネスを測定し、それと攻撃性、孤独感、主観的幸福感との関連を検討しました。その結果、特に興味深かったのが、潜在的シャイネスと主観的幸福感の間に正の関連が見られたことです。つまり、無意識的に自分とシャイネスが結びついている人というのは、主観的に幸せであると思う傾向があるということです。これは、シャイネスの適応的な側面を示唆しているといえるでしょう。

 発表後には、シンガポールで研究をしている日本人の研究者から重要な質問をいただき、今回の研究結果をもう少し詳細に見ていく必要性を痛感いたしました。今回の結果は日本人を対象としたデータに基づくもので、他の国で同様の研究を行った場合、結果が同じように出るかは不明です。本研究での足りない部分に気づくことができたと同時に、逆に言えば発展性に富む分野であるとも思われました。

 

 この学会は初めて参加したのですが、教育的な意義を意識した研究が非常に多かったように感じました。心理学において非常に有名な自己決定理論で知られるRyan先生が初日に講演にいらっしゃっていたので、貴重な機会と思い我々も出席いたしました。非常にユーモアに富む講演の仕方であり、発表の内容もわかりやすく、学ぶべきところが多いものでした。1つだけ印象的な内容を挙げるとするならば、アメリカで参加者のポジティブな感情の変動を追った研究が紹介されていました。それによると、月曜から木曜までの平日はポジティブな感情が低く、金曜と土曜にそれが上昇し、日曜に再び低いレベルに戻るという結果が呈示されており、日本でも似たようなパターンが観察されるのではないかと、個人的には非常に興味深い結果でした。このように、国際学会は非常に多様な研究者から知見を得ることのできる機会であり、ぜひとも次回も参加してみたいと思っております。

 

Relations of Explicit/Implicit Shyness With Other Individual Differences: Implication for Adaptive Values of Shyness(顕在的および潜在的シャイネスと他個人特性との関連―シャイネスの適応的側面の示唆―)(澤海崇文・藤井勉・相川充)

 

(CRET連携研究員 澤海 崇文)


澤海 崇文 -Takafumi Sawaumi-

CRET連携研究員、流通経済大学 社会学部 助教

趣味: テニスやヨガなどで定期的に体を動かすようにしています。語学学習にも励み、海外旅行も人生の楽しみの一つです。

研究テーマ:対人コミュニケーションやパーソナリティに興味があり、それらの比較文化研究が専門です。

研究発表論文

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CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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