CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

教育システム情報学会(JSiSE)2013年度第5回研究会(スマートデバイスによるこれからの教育・学習環境/一般)発表報告
「スマートフォンを活用したテストの出題方法がテストの動機づけや成績に与える影響」

 2014年1月11日に、高知工科大学(教育研究棟A)で開催された教育システム情報学会研究会に参加し、「スマートフォンを活用したテストの出題方法がテストの動機づけや成績に与える影響」と題して発表を行いました。

 

 本研究の背景として、平成25年度より高等学校の共通教科「情報」の「社会と情報」、「情報の科学」の2科目に再編され、段階的に施行されていることなどから、年々、新入生の情報に関するスキルが変容しており、大学における情報教育の授業改善が求められていることが挙げられます。一方、FD(Faculty Development)の義務化により、大学では授業時間外学習の促進や学生の学力向上や知識定着を目指した授業改善が求められています。

 上記の課題を解決するために、大学情報教育で取り組まれていることの一つとして、対面授業とeラーニングシステムを融合した「ブレンディッドラーニング(Blended Learning)」があります。昨今では、ほとんどの大学生が携帯電話を所持し、かつ、スマートフォンの割合が増加していることから、これを活用したモバイルラーニング(mラーニング)が注目されています。これにより、授業時間外学習の促進や知識定着の向上などが期待されています。

 知識定着の側面として、先行研究よりテストの実施が提唱されていますが、スマートフォンにおいて、全ての問題を一画面に表示する「全問表示」と一問一答形式で出題する「一問一答」では、どちらの方が学習者の負荷が低く、意欲的に取り組めるかの検討が求められていました。

 そこで本研究では、大学情報基礎科目を対象に、対面授業とmラーニングシステムを融合させたブレンディッドラーニング環境において、スマートフォンを利用した授業時間外におけるテスト配信と、自主的なテストの実施場面を想定した実験環境を構築しました。そして、大学生のテスト接近・回避傾向を考慮しながら、テストの出題形式による差異をテストに対する動機づけや自己効力感、正答率などの観点から追究することを目的としました。

 

  本研究では、60名の大学生を対象に多肢選択と穴埋めの混合問題(計15問)をスマートフォンで実施しました。この際、全ての問題を一画面に表示する「全問表示」群(30名)と一問一答形式で出題する「一問一答」群(30名)に分けました。テストによる知識定着を図るためには、先行研究より、学生のテスト観(テスト接近・回避傾向)に着目することが重要であることから、学生のテスト接近・回避傾向を分析しました。この結果、両群ともテスト接近・回避傾向に偏りが認められなかったため、両群の分け方は妥当と判断されました。

  次に、テストの正答率と実施時間、テスト負荷とテストに対する意欲、自己効力感を比較分析しました。この結果、テスト負荷とテストに対する意欲について、一問一答群は、全問表示の出題形式であるとテストが負担で取り組む意欲が低いと認識していることが分かりました。一方、「この授業で学習したことを十分理解した感じになる」などの自己効力感は、全問表示群の方が一問一答群よりも有意に高い認識であり、テストの正答率もまた、全問表示群の方が有意に高いことが明らかになりました。これらの知見から、取り組みやすさは、一問一答の出題形式であるが、理解に対する効力感の高さは、全問表示の出題形式であることが示唆されました。

 

  今後の課題として、1)全問表示の方が正答率、効力感が高い理由の追究、2)解答方法の手順に関する分析、3)タブレットPCによる調査分析、4)実際の授業を対象とした長期的な調査などが挙げられます。

 

  最後に、本研究会では多くの先生方からアドバイスをいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

(CRET連携研究員 北澤 武)


北澤 武 -Takeshi Kitazawa-

CRET連携研究員、東京学芸大学 自然科学系 准教授

趣味: 旅行、水泳、下町散策など。

研究テーマ:ICT を活用した教育効果、ICT 活用指導力に着目した研究を行っています。

研究発表論文

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CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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