CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

日本心理学会第78回大会 発表報告
潜在的感情は自己呈示動機で歪みうるのか?
―IPANATを用いた検討(2)―

 2014年9月10から12日にかけて京都府の同志社大学で開催された日本心理学会第78回大会に、連携研究員の藤井研究員と澤海研究員、相川理事で参加してきました。

 

 会場の同志社大学今出川キャンパスは地下鉄の今出川駅に直結しており、初めて訪れた私も迷子にならずに会場にたどり着くことができました。キャンパス内の建物も雰囲気がよく、キャンパスを歩いているだけでもどこかの観光地に来たような気持ちになりました。9月に入っているとはいえ日中は汗ばむ気温で半袖の方が多かったのですが、キャンパスを散歩していた時に心地よい風がふいてきて、秋の訪れを感じました。

 

 さて、今回の学会では、私と藤井研究員・澤海研究員・相川理事の連名で「潜在的感情は自己呈示動機で歪みうるのか?―IPANATを用いた検討(2)」というタイトルのポスター発表を行いました。これは7月に藤井研究員が社会心理学会第55回大会で発表した「潜在的感情は自己呈示動機で歪みうるのか?―IPANATを用いた検討(1)」から継続する研究内容を発表したものです。

 

 心理学の研究において、参加者が自分の気持ちや考えを自己報告で回答する質問紙法を使うことが多くあります。しかしながら、質問紙に回答する際に参加者が自分の気持ちを偽って回答したら、その質問紙への回答は参加者自身の実際の気持ちとは異なるものとなってしまいます。例えば、「他人からよく思われたい」という気持ちで自分自身をよく見せようとした経験というのは、多くの方がもっているのではないでしょうか。そういった状況で自分自身の感じていることを偽って報告するということも、往々にして起こり得ることだと思います。そこで前回の研究では、そういった参加者自身の意志によるバイアスのかかりにくい感情を測定するために開発されたIPANAT (Implicit Positive and Negative Affect Test) という測定法を用い、「他人からよく思われたい」という状況下でIPANATでの測定値が歪むかということを検討しました。

 

 「他人からよく思われたい」という思いで自分を偽るという現象が起きる一方で、「他人から悪く思われたい」という気持ちから、自分を悪く見せようとすることも起こりえることです。そこで、本研究では他人に対して自分をよく見せたり、悪くみせたりしようという自己呈示動機というものが喚起された状況下を実験状況として追加し、IPANATの測定値が歪むかという点について検討しました。

 

 参加者にはオンラインで実験に協力していただき、画面上に教示を出すことで自己呈示動機を操作しました。一つ目の条件の参加者には、就職活動場面を思い浮かべてもらい、そこで採用されるように回答するように教示をしました。二つ目の条件の参加者にも、就職活動場面を思い浮かべてもらいましたが、そこがいわゆる”ブラック企業”ということを知ってしまい、面接で落とされるように回答するよう教示をしました。最後に、三つ目の条件の参加者には、正解はないので、正直に回答するよう教示をしました。教示後に、IPANATへ取り組むこと、および自身の感情を自己報告してもらうためにPANAS (Positive and Negative Affect Schedule) という質問紙へ回答することを求めました。

 

 データを分析した結果、IPANATの得点は教示による有意な影響が認められなかったことから、IPANATによる測定値が教示によって歪みにくいことが示唆されました。

 

 潜在的な測度に関心のある方は多いようで、たくさんの先生方が私たちの発表に足を運んでくださいました。今回の結果はIPANATを活用していくことに対して比較的肯定的なものと考えられます。ただし、IPANATの研究はまだ始まったばかりということで、その妥当性については今後さらに検討する必要があるかと思います。いらした方々とも、IPANATの手続きや材料に関して議論を交わしたり、さらに発展的に潜在的測度全般に関わる議論も活発に行うことができたり、ポスターを掲示していた2時間の間は非常に内容の濃い有意義な時間となりました。多くのことを学び考える機会を与えてくださった先生方にこの場を借りて御礼を申し上げます。

 

 

潜在的感情は自己呈示動機で歪みうるのか?―IPANATを用いた検討(2)―

(中野 友香子・藤井 勉・澤海 崇文・相川 充)

 

(CRET連携研究員 中野 友香子)


その他研究員 -Other Researcher-

研究発表論文

2017-07-31

教育テスト研究センター年報 第2号 2017年7月

相川 充

赤堀 侃司

加藤 由樹

加藤 尚吾

竹内 俊彦

舘 秀典

稲垣(藤井) 勉

澤海 崇文

北澤 武

若山 昇

宇宿 公紀

安西 弥生

外山 美樹

小林 輝美

湯 立

長峯 聖人

三和 秀平

酒井 智弘

林 楚悠然

黒住 嶺

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CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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コミュニケーション能力、チームワーク能力、ソーシャルスキルなどを測定するテスト方法の研究開発を行う。

相川 充

-Atsushi Aikawa-
筑波大学 人間系
博士(心理学)

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コンピューターベースのテストの基盤研究や、メディアと認知に関わる基礎研究、およびそれらの知見を活かした応用研究および実践研究を行う。

赤堀 侃司

-Kanji Akahori-
東京工業大学 名誉教授

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