CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

日本教育工学会2014年度 第30回全国大会研究発表報告
「クリティカルシンキングによる学生の理解度向上」

 2014年9月21日に岐阜大学で開催された日本教育工学会第30回全国大会に参加し、「クリティカルシンキングによる学生の理解度向上」と題して、基盤設計研究部門で行った実験結果を発表しました。

 

 現代社会を生きていくには、論理的に考えて、問題発見・解決をすることが必要です。そこで大学において論理的に考える方法を教えています。しかし、考える方法を教えなくても、学生は既存の知識を活用してある程度は自分で考えることができます。本研究の目的は、教員が新たな知識を教えなくても、学生に思考を促すことさえすれば、問題発見・解決につながることを、明らかにすることです(図1)。調査した結果、知識として理解していた6割の人のうち、ヒントを得てから知識を活用できたのはその7割、また最初からヒントなしで活用できたのは約1割にとどまりました。一方、思考を促すだけで、問題発見・解決に向かうことは統計的に確認できました。以下にその内容について述べます。


 

 

 調査は、大学生60名(1~4年生)を対象にしました。設問をスクリーンに提示して、学生がスマートフォンでWebに解答しました。学生の解答を理解度によって3点満点で点数化し、変化を分析しました。なお、設問は以下のとおりです。


「地球温暖化の影響で北極の氷が溶け出すので、海面が上昇する。」

この理由と結論の関係は適切でしょうか。

Q1:あなたの意見を述べてください。

Q2:疑問点や問題点があれば,書いてください。

「んーーっ,チョット待った。それって,ホント? なぜ、本当」と3回唱和する。(30名のみ)

Q3:疑問点や問題点があれば書いてください。

次のヒントを提示。(別の30名のみ) 

コップの中の水に氷が浮かんでいます。水はコップに,ぎりぎりいっぱいまで入っています。コップの中の氷が溶けたときには、コップの水はどうなりますか?


 

1. 水はコップから溢れ出る

2. 水面の高さは変わらない

3. 水面は下がる

4. 氷の温度により変化は異なる

5. 私はよく分からない


Q4:疑問点や問題点があれば書いてください。

 


 実験の結果、学生が疑問点や問題点に気づくには、唱和することやヒントをあげることが有効であることが統計的に示されました。しかし、6割の学生は最後まで疑問点や問題点に気づいていなかったようです(図2、表1)。

 

*:p<.05、  **:p<.01、  ***:p<.01

 

 

 アルキメデスの原理は中学校の理科で学びます。コップの氷が解けても水は溢れないということを知っていた大学生は6割にすぎません。さらに、その原理を北極の氷に活用できたのは45%だけでした。知識として原理を知っていても現実の世界に活用できない学生が17%になりました。もったいない話です。理論を知っていても、なぜそれが活用できないのでしょうか。知識を活用するには、3つの段階、理解⇒適用⇒活用があり、それぞれ「分かった」⇒「解けた」⇒「使えた」と階段を上がる必要があります。

 

 この実験では、知識は何も教えていません。何も教えなくても、学生自身が考えれば問題発見・解決に向けて理解度が有意に向上するのです。つまり、自ら考えることが重要ということです。したがって、教員の仕事はただ知識を教えるだけでなく、学生に考えることを促すことも必要になります。

 

 今後の課題としては、考えを促す際に学生が疑問点・問題点を想起するには、どのような方法が優れているのかを探究することがあります。

 

 最後に、本研究は共同研究であり、他の先生方から多くのご助言・ご協力を頂いています。あらためてここにお礼申し上げます。

 

<参考文献>若山昇 (2009) 大学におけるクリティカルシンキング演習授業の効果、大学教育学会誌、31(1)

 

(CRET連携研究員 若山 昇)


若山 昇 -Noboru Wakayama-

CRET連携研究員、帝京大学 法学部 准教授

趣味:温泉、水泳、旅行、散歩

「それってホント? なぜ、本当?」と、クリティカルシンキングしています。
研究テーマはクリティカルシンキング。
紹介Webサイト:http://www.e-campus.gr.jp/staffinfo/public/staff/detail/125/20

研究発表論文

2017-07-31

教育テスト研究センター年報 第2号 2017年7月

相川 充

赤堀 侃司

加藤 由樹

加藤 尚吾

竹内 俊彦

舘 秀典

稲垣(藤井) 勉

澤海 崇文

北澤 武

若山 昇

宇宿 公紀

安西 弥生

外山 美樹

小林 輝美

湯 立

長峯 聖人

三和 秀平

酒井 智弘

林 楚悠然

黒住 嶺

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CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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コミュニケーション能力、チームワーク能力、ソーシャルスキルなどを測定するテスト方法の研究開発を行う。

相川 充

-Atsushi Aikawa-
筑波大学 人間系
博士(心理学)

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コンピューターベースのテストの基盤研究や、メディアと認知に関わる基礎研究、およびそれらの知見を活かした応用研究および実践研究を行う。

赤堀 侃司

-Kanji Akahori-
東京工業大学 名誉教授

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