CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

日本教育工学会(JSET)2015年第1回研究会(学習支援環境とデータ分析/一般)発表報告
「スマートフォンを活用した小テストの出題方法が正答率と解答時間に与える影響」

 2015年2月28日に、九州大学(箱崎キャンパス)で開催された日本教育工学会研究会に参加し、「スマートフォンを活用した小テストの出題方法が正答率と解答時間に与える影響」と題して発表を行いました。

 

 本研究の背景として、年々、大学生の情報に関するスキルが変容していることから、大学における情報教育の授業改善が求められていることが挙げられます。FD(Faculty Development)の観点から、大学では授業時間外学習の促進や学生の知識定着を目指した授業改善が求められています。これらの課題を解決するために、筆者はモバイルラーニング(mラーニング)に着目し、大学生のテスト接近・回避傾向を考慮した小テストのあり方について研究を行ってきました。
 筆者の先行研究では、スマートフォンにおいて、全ての問題を一画面に表示する「全問表示」と一問一答形式で出題する「一問一答」では、前者の方が小テストの正答率が高いことが示されました。この理由として、全問表示の方が問題の文脈が理解できることが予想されました。しかしながら、この理由をより明らかにすることが求められていました。
 そこで本研究では、大学のmラーニングシステムとしてスマートフォンに着目し、これを利用した授業時間外における小テスト配信と、自主的な小テストの実施場面を想定した実験環境を構築しました。そして、問題の文脈を意識した多肢選択と穴埋めの混合の小テスト(15問)を作成し、これらの問題を全問表示と一問一答の出題方法で出題した場合、正答率と解答時間にどのような差異が生じるか、テスト接近・回避傾向の観点から追究することを目的としました。

 

 本研究では、60名の大学生を対象に多肢選択と穴埋めの混合問題(計15問)をスマートフォンで実施しました。この際、全ての問題を一画面に表示する「全問表示(文脈あり)」群(30名)と一問一答形式で出題する「一問一答(文脈あり)」群(30名)に分けました。テストによる知識定着を図るためには、先行研究より、学生のテスト観(テスト接近・回避傾向)に着目することが重要であることから、先行研究と同様、学生のテスト接近・回避傾向を分析しました。
  次に、テストの正答率と実施時間を出題形式やテスト接近・回避傾向で比較分析しました。この結果、以下の知見が得られました。
・正答率について、テスト接近傾向が高い学生の正答率が有意に高かったため、テスト接近傾向の高低に影響する可能性がある。
・正答率について、テスト接近・回避傾向が「低高」の学生は、全問表示よりも一問一答の方が有意に高いことが示唆された。そのため、この学生に文脈を意識した小テストを実施する場合は、全問表示よりも一問一答の出題方法で実施した方が、正答率は高くなる可能性がある。
・解答時間について、出題方法やテスト接近・回避傾向による差異は存在しなかった。
・解答時間について、有意差は認められなかった。しかし、小テストに対して最もポジティブと考えられる「高低」の学生の解答時間は、全問表示と一問一答に80秒以上の差があり、後者の方が長かった。また、一問一答において、テスト接近・回避傾向別に解答時間の平均値を見てみると、最大値と最小値に100秒以上の差があったため、一問一答の出題方法を実施する場合は、テスト接近・回避傾向に着目した議論を継続する必要がある。

 

 今後の課題として、1)本研究で得られた小テストの正答率や解答時間の客観データに加え、小テストに対する動機づけなどの主観データとの関連分析を行うこと、2)本研究で得られた結果と、文脈を意識していない小テストの結果との比較分析をスマートフォンやタブレット型端末で行うことなどが挙げられます。

 

 最後に、本研究会では多くの先生方からアドバイスをいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

「スマートフォンを活用した小テストの出題方法が正答率と解答時間に与える影響」(北澤 武)

 

(CRET連携研究員 北澤 武)


北澤 武 -Takeshi Kitazawa-

CRET連携研究員、東京学芸大学 自然科学系 准教授

趣味: 旅行、水泳、下町散策など。

研究テーマ:ICT を活用した教育効果、ICT 活用指導力に着目した研究を行っています。

研究発表論文

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