CRETの研究発表論文 Dissertation

CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。

日本社会心理学会第56回大会発表報告
―潜在的シャイネスを測定するSingle Target IATの作成 (1)―

2015年10月31日から11月1日にかけて東京女子大学にて開催された日本社会心理学会第56回大会に参加し、澤海研究員・相川理事と連名で発表を行いました。東京女子大は研究員として所属していたこともあり、何度も訪れた経験がありますが、歴史ある建物の数々や、学内の緑の多さは、いつ来ても心を癒してくれます。

 

今回は、「潜在的シャイネス」を測定するための新しい方法を提案した発表を行いました。これまで、私たちは数年にわたり、「潜在連合テスト(Implicit Association Test:以下IATと略します)」と呼ばれる手法を用いて、意識されないシャイネスの程度を測定する研究を重ねてきました。IATは海外でも多くの研究が行われ、その妥当性や有用性が繰り返し示されています。

 

ただし、IATにはいくつかの短所があります。たとえば、シャイネスを測定するIATは、「自己—他者」というカテゴリーと「シャイな—社交的な」という属性を組み合わせた単語の分類課題を行ってもらい、「自己」が「シャイな」と「社交的な」のどちらと結びついているのかを、分類に要した反応時間を利用して測定します。ですが、「自己」が「シャイな」と結びついていることは、同時に「他者」と「社交的な」が結びついていると言い換えることもできます。つまり、「自己」と「シャイな」の結びつきの程度を純粋に測定できていない、という問題があります。また、IATは試行数がやや長く、慣れていないと10分以上の時間を要することも短所の一つです。

 

今回作成した「Single Target IAT(ST-IATと略します)」は、この点を克服しうるIATのバージョンとして期待されています。「自己—他者」のカテゴリーのうち、「他者」を取り払うことで、「他者」カテゴリーの影響を受けることなく、「自己」と2種類の属性語(シャイな、社交的な)のどちらが結びついているかということを純粋に調べることができます。また、この方法では試行数が従来のIATと比べて少なくなるという特徴があり、参加者の負担が減らせます。

 

当然ながら、新しい尺度を作成した場合、それが妥当であるかどうかのチェックが必要になります。そこで本研究では、社会的望ましさを測定する尺度や、これまでに私たちが作成したシャイネスIATを、ST-IATとあわせて実施し、その相関関係を検討しました。ST-IATが潜在的シャイネスを測定できているならば、従来のシャイネスIATと一定の相関が見られるはずですし、社会的望ましさを測定する尺度と相関しないことが確認できれば、回答が歪みにくいことを示すことができます。

 

分析の結果、新たに作成したST-IATはシャイネスIATと一定の正の相関を示しました。また、ST-IATもシャイネスIATも、社会的望ましさとの相関は有意ではなく、予想と一致した結果が得られました。今後はST-IATが実際の行動をきちんと予測できるかどうかもあわせて検討していく予定です。

 

発表は時間帯もよく、多くの方にお越しいただけました。IATと比べてST-IATを用いている研究は絶対数が少なく、「どのような構造になっているのか知りたい」とか、「従来型のIATとの相関が低いのではないか」、「今回作成したものに加えて「他者」と「シャイ—社交的な」のST-IATを作成し、2種類のST-IATと従来のシャイネスIATとの関連を調べてはどうか」といったご意見をいただきました。いつも感じることですが、学会で発表することは、私たちの活動をアピールするだけでなく、客観的なご意見をいただけることによって、研究が発展する可能性が高まるという点で、大きなメリットがあります。いただいたご意見を参考に、今後の研究に繋げようと思っています。

 

社会心理学会は毎年2日間という短い期間で開催されますが、私たちの関心に近い研究も多く、刺激の多い学会です。今回の研究をより深化させた研究成果を公表できるよう、来年9月に関西学院大学で行われる次回大会に向けて準備を進めていきます。

 

潜在的シャイネスを測定するSingle Target IATの作成 (1) 

(藤井 勉・澤海 崇文・相川 充)

 

(CRET連携研究員 藤井 勉)


稲垣(藤井) 勉 -Tsutomu Inagaki (Fujii)-

CRET連携研究員 鹿児島大学 鹿児島大学学術研究院法文教育学域教育学系 講師

2012年から2016年まで韓国で教育にあたっていました。日本に戻ってからは、車であちこち出かけるのが趣味になりました。

研究テーマ:人の態度や特性(パーソナリティ)を、潜在的測定法などを使って多角的にとらえる研究を続けています。http://pyfpy037.wix.com/tsut0muf

研究発表論文

2017-07-31

教育テスト研究センター年報 第2号 2017年7月

相川 充

赤堀 侃司

加藤 由樹

加藤 尚吾

竹内 俊彦

舘 秀典

稲垣(藤井) 勉

澤海 崇文

北澤 武

若山 昇

宇宿 公紀

安西 弥生

外山 美樹

小林 輝美

湯 立

長峯 聖人

三和 秀平

酒井 智弘

林 楚悠然

黒住 嶺

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CRETの研究領域

テストの評価や解析についての研究を行う。海外の教育テスト研究機関との協同研究や交換プログラムなども実施。







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コミュニケーション能力、チームワーク能力、ソーシャルスキルなどを測定するテスト方法の研究開発を行う。

相川 充

-Atsushi Aikawa-
筑波大学 人間系
博士(心理学)

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コンピューターベースのテストの基盤研究や、メディアと認知に関わる基礎研究、およびそれらの知見を活かした応用研究および実践研究を行う。

赤堀 侃司

-Kanji Akahori-
東京工業大学 名誉教授

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