CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。
日本心理学会第82回大会 発表報告
「防止焦点は認知資源の温存効果に優れているのか?」
「産出物の制約が創造的パフォーマンスに及ぼす影響―制御焦点を調整変数として―」
2018年9月25日(火)から27日(木)にかけて,仙台国際センターにて開催された日本心理学会第82回大会に参加し、ポスター発表を行いました。9月下旬の仙台は、秋がすでに訪れはじめています。「杜の都」の緑あふれる街の中で秋雨が静かに降り続き、肌寒く感じる日もありましたが、会議場の中には熱い雰囲気が満ちており、知的な刺激の多い3日間を過ごしました。
外山研究員は、25日(火)の午前中に、湯・肖研究員・長峯研究員・三和研究員・相川理事と連名で「防止焦点は認知資源の温存効果に優れているのか?」という内容でポスター発表を行いました。昨年度、SPSP(Society for Personality and Social Psychology)の年次大会にて、私たちは、制御完了(ある目標が達成されているかどうか)の観点から、制御焦点とパフォーマンスの関連を検討した研究を発表しました。その研究の結果、制御未完了(ある目標が達成されない)条件では、促進焦点と防止焦点でパフォーマンスに差が見られないが、制御完了(ある目標が達成される)条件では、防止焦点は促進焦点よりも、後続のパフォーマンスが低いことが示されました。それらの知見に関して、外山研究員の今回の発表では、認知資源の温存の観点から、制御焦点とパフォーマンスの関連を検討しました。その結果、現在の課題に比べ、後続の課題の優先順位が高い場合のみ、防止焦点は促進焦点に比べ、認知資源の温存動機づけが高く、現在の課題のパフォーマンスが低かった一方で、後続の課題のパフォーマンスが高いことが示されました。
私は、26日(水)の午後に、外山研究員・長峯研究員・三和研究員・相川理事と連名で「産出物の制約が創造的パフォーマンスに及ぼす影響―制御焦点を調整変数として―」という内容でポスター発表を行いました。昨年度、SPSPの年次大会での発表では、産出物の制約が創造的パフォーマンスを高める効果は、特性としての促進焦点で見られ、特性としての防止焦点で見られないという結果が示されています。今回の発表内容は、特性的制御焦点ではなく、状況によって活性化された制御焦点に関しても同様な結果が得られるかどうかを検討したものでした。研究の結果、すべての群間で、創造的パフォーマンスの差は示されず、昨年度の結果は再現できませんでした。この結果については、制御焦点の活性化に伴い、認知的活性化のレベルが高まったことで、創造的パフォーマンスが全体的に向上した可能性が考えられます。
ポスター発表の時には、動機づけの研究者のみならず、制御焦点理論の応用に関心のある方や創造性の研究者など様々な研究背景の方にお越しいただきました。会話の中では、課題遂行時の動機づけの変化を考慮すべきという意見や創造性の特定の過程に焦点を当てて課題を選んだほうがよいという意見、様々な視点からのコメントをいただくことができました。また、制御焦点理論を他の領域、例えば、健康行動やギャンブルの研究で応用したいという研究者の方々にも多くお越しいただき、有意義な意見交換ができました。
私たちが、日本心理学会での成果を発表するのは、これまで4年目になります。とりわけ、去年、シンポジウムを開いたことや、研究成果が「心理学研究」で掲載されることを通して、多くの方に私たちの研究を知っていただくようになったと、今回の発表において実感できました。私たちの研究は、まだまだ続いております。これからも、この日本最大の心理学会で研究成果を発信し続けたいと思います。
「外山美樹・湯立・肖雨知・長峯聖人・三和秀平・相川充 (2018). 防止焦点は認知資源の温存効果に優れているのか? 日本心理学会第82回大会発表論文集、688.」
「湯立・外山美樹・長峯聖人・三和秀平・相川充 (2018). 産出物の制約が創造的パフォーマンスに及ぼす影響―制御焦点を調整変数として― 日本心理学会第82回大会発表論文集、722.」
(CRET連携研究員 湯 立)
2022-08-02
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加藤 尚吾
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2021-07-21
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