CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。
The 13th Biennial Conference of Asian Association of Social Psychology 発表報告
~A New Approach to Social Skills Assessment Among Japanese High School Students: The Use of Scenario-Based Illustrations~
(日本の高校生を対象とした新しいソーシャルスキルテスト
―シナリオに基づいたイラストを用いた検討―)
台湾の台北にて,2019年7月11日から13日にかけて開催されたThe 13th Biennial Conference of Asian Association of Social Psychologyに参加しました。
少し個人的な話をすると,台湾はとてもなじみ深い所です。母親が台湾人という要因もあり,台湾には数えきれないほど訪れた経験があり,今回台北に到着した時には全くといっていいほど,新しい地域に来たという感覚はありませんでした。空港からMRTという地下鉄に乗り,駅を出たときの印象は「とにかく暑い」です。東京は梅雨の時期ですが,台北はさらに湿度が高くじめじめした気候でした。そのような中でも冷たいタピオカミルクティーを一杯飲むと,気分もリフレッシュされ,新しい気持ちで研究に取り組めます。日本ではタピオカミルクティーがブームのようで,一杯のために何時間も列に並んで待つということが珍しくなくなってきましたが,台湾ではそのようなことはなく,すぐに購入でき,味もさほど変わりません(私の個人的な味の感想です)。タピオカミルクティーが好きな人,さらには台湾料理が好きな人にはぜひともオススメしたい場所です。
さて,私たちの研究グループは12日の13:10から14:20までのセッションにて,口頭発表を行いました。高校生のソーシャルスキルを測定するテストを現在開発中で,そのテストの妥当性について検討した研究を報告しました。
ソーシャルスキルを測定する方法は様々に開発されていますが,最も頻繁に用いられているのはリッカート尺度(質問項目に対して自分に当てはまる程度を選択する形式)による方法だと思われます。もちろん,この方法は簡便に実行でき,ソーシャルスキル得点も簡単に算出できますが,いくつかの制約がつきます。例えば,社会的望ましさ(回答者の生きる社会にとって望ましいような人物像であるかのように回答する傾向)の影響を強く受ける可能性が,これまでの研究で指摘されています。また,様々なソーシャルスキル尺度では文脈が特定されておらず,あいまいな場面で回答を依頼しているという危険も伴います。したがって,本研究では,場面を特定した新しい測定法を開発しました。3枚のイラストを用いて場面を呈示し,回答者にはその場面にいると想定してもらい,どのような行動を取るかを答えてもらう形式です。このような場面を42種類作成し,さらに妥当性のチェックのために概念的に関連する尺度も含めてオンライン調査を行い,412名の高校生に回答してもらいました。
その結果,ソーシャルスキルを構成する一部のスキル(例えば相手との関係を開始するために必要とされるスキル)においては妥当性が確認されたものの,その他のスキル(例えば感情をコントロールするスキル)においては妥当性が確認できませんでした。
本発表に対して,フロアからは複数の質問が出てきました。代表的なものだけ挙げると,どのようにイラストやストーリーを作成したのかといった手続きに関する質問,そして,さらにクリティカルなものとして,今回の測定法を使ってもなお社会的望ましさの影響は完全に排除できないのではという質問も出てきました。後者においては,今後の研究を進める上で非常に重要な指摘です。次の研究では,社会的望ましさの傾向も測定するといった工夫が必要だと感じました。
我々の発表時間以外にも,他の研究者による発表を聴きに行って,知識を深めることができました。これまでの比較文化心理学の歴史をレビューするような発表や,日本固有の「ふつう」という概念を綿密に分析した発表も聞き,アジア圏での社会心理学の現状を把握することができ,実りの多い学会だったと思います。
A New Approach to Social Skills Assessment Among Japanese High School Students: The Use of Scenario-Based Illustrations
(澤海崇文・酒井智弘・相川充)
(CRET連携研究員 澤海 崇文)
2017-10-06
外山 美樹
2017-09-20
日本心理学会第81回大会発表(シンポジウム)報告 「わが国における制御適合に関する研究~個人に合った動機づけ,パフォーマンス,価値の高め方」
相川 充
外山 美樹
湯 立
長峯 聖人
三和 秀平