2020年1月26日に和歌山大学教育学部附属小学校で開催された日本教育メディア学会2019年度第2回研究会に参加し、『モンスター・ペアレントの心理を推測するゲーム教材の開発と実験』を発表しました。
本研究の目的は、モンスター・ペアレント(以下モンペ)への対応を嫌がるあまり、教員採用試験をあきらめてしまう教育学部の学生を減らすために、モンペへの対応法を学べるカードゲームを開発することです。
「いっけん不可解なモンペの要求にも、それなりの理由があり、それを理解することが重要である」という考えから、2011年にホルガー・ベッシュが発表した既存のカードゲーム「ブラックストーリーズ:50の"黒い"物語」を参考にしたゲーム「モンペストーリーズ」を作成しました。ただし「ブラックストーリーズ」も、以前から行われていた「水平思考パズル」(「海亀のスープ」問題)の一種です。
「モンペストーリーズ」のルールの概要は以下です。
(1) プレイヤーは2人以上。
(2) 最初に「親(出題者)」を1人決める。残りのプレイヤーは「子(回答者)」となる。親は問題カードの表面(問題)と裏面(正解)を読む。
(3) 親は表面の問題を読み上げる。回答者である「子」は、出題者である「親」に何度でも質問できるが、親は「Yes」「No」「関係ない」等でしか答えてはいけない。
(4) 最初に(裏面に書いてある)真相を回答したと親が判定した「子」が勝者となる。
ゲームの効果を確認するため、30名の大学生に5問を40分で試遊していただき、その後、5人×6班に分かれ、モンペストーリーズの問題作成も30分間、体験いただきました。
ゲーム前、ゲーム後、問題作成後に行ったアンケート調査を分析したところ、「このゲームは/面白そうだ/面白かった/作るのは面白かった」の値は高評価でした。またゲームを体験したことで、実験参加者はモンスターペアレントにもある程度の共感ができるようになったことがわかりました。
詳しく説明すると、ゲーム体験後の、1点~5点(数が大きいほど「同意する」)の30名の平均値は
(1) 「このゲームは/面白そうだ/面白かった/作るのは面白かった」の値が4.21と高く、またルールを聞いた体験前では4.20だが、体験後は4.40と、値が+0.20上昇します。
(2) 「このゲームをすると、モンペの立場に立って考えられるように/なりそうだ/なりそうだ/作ると…なりそうだ」の値は、3.40→3.33→3.73と変化し、絶対値としてはやや高い評価でした。ただ、面白さに関しては評価が高かった割には、「モンペの立場に立って考えられるようになる」についての評価は、期待したほど高くありませんでした。
(3) 問題作りを体験した後は、「30分あればチーム全員で考えれば、新たな問題を1問以上、作る自信がある」の値は3.40→3.57→4.23と、大幅に上昇します。
研究会では活発な質問・アドバイスをいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
(CRET連携研究員 竹内 俊彦)