CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。
日本社会心理学会第54回大会 発表報告
~顕在的・潜在的シャイネスが自己呈示行動に及ぼす効果(2)―自由記述に基づく検討―~
2013年11月2日から3日にかけて沖縄県宜野湾市の沖縄国際大学にて開催された日本社会心理学会第54回大会に、連携研究員の澤海研究員と参加し、2件の発表を行いました。
私は現在、韓国のソウルにある大学に勤務しており、沖縄へはソウルから向かったのですが、まずは温度の違いに驚きました。今の時期のソウルは、朝夕は気温が一桁まで下がる日がほとんどなのですが、沖縄は夜でも20度以上あり、秋はまだまだ遠く感じました。そして、会期中は半袖でも十分に過ごせる気候でした。沖縄入りをした日のみ雨が強かったのですが (残念なことに、この日に首里城を観光したのですが…)、学会中は晴天に恵まれました。
会場となった沖縄国際大学は、私たちが宿をとった旭橋駅周辺からは距離があるため、宿泊先のホテル近辺から路線バスに乗り、40分ほどかけて向かいました。当然のことですが、学会を開催する場所ごとに、利用する交通機関や会場までの距離、周囲の環境なども含めて大きく違うものだと実感しました。どちらが良いということもありませんが、東京や大阪など、都市部にある大学は電車やバスでの移動が容易で便利ですが、こういった長めの距離の移動も、のんびりできてよいと思いました。
学会の懇親会は那覇市内のホテルで開催され、沖縄料理や種々の泡盛など、沖縄ならではのものを味わうことができました。今年は懇親会参加者が例年より多く、400名ほどの方が参加されたそうで、会場では知人・友人を探すのが大変でしたが、楽しく過ごすことができました。
さて、今回、私は澤海研究員・相川理事と連名で「顕在的・潜在的シャイネスが自己呈示行動に及ぼす効果 (2)―自由記述に基づく検討―」、「顕在的・潜在的シャイネスが対人印象に及ぼす効果―他者評定を指標として―」というタイトルで2件のポスター発表を行いました。私たちのグループが数年前から継続して研究している「IAT (Implicit Association Test) を用いた潜在的シャイネスの測定 (e.g.、 相川・藤井、 2011; 藤井・相川、 印刷中; Fujii、 Sawaumi、 & Aikawa、 2013など)」において、今回は実際の行動指標を収集し、分析対象としました (データセットは藤井・澤海・相川 (2013) と同様です)。実験参加者に「見知らぬ人が100人ほどいる場面を想像し、1分間ほどの自己紹介をするとしたら、どのような内容を話しますか?」と教示を行い、実際に自己紹介を考え、入力してもらうという実験を行いました。ただし、Webベースの実験でしたので、実際に人前やカメラの前で自己紹介をしてもらうのではなく、自己紹介文を入力してもらいました。今回は藤井他 (2013) に引き続き、この自己紹介の内容を対象に、潜在的・顕在的シャイネスがどのような影響を及ぼすかを分析しました。分析に先立ち、著者間で自己紹介文の内容について検討したところ、「こんにちは」「はじめまして」などの、『あいさつ』や、「趣味は○○です」「○○に住んでいます」など、『表面的な内容』、そして「恋人は現在募集中です」「○○が悩みです」など、『内面的な内容 (表面的内容より深い内容)』の3種類に分けられると考えました。この基準にしたがい、種類ごとに登場回数を数え上げ、顕在的・潜在的シャイネスの高低によって差が見られるか否かを検討しました。結果は、「潜在的なシャイネスが高いほど、『あいさつ』が少ない傾向がある」というものでした。この結果は、「潜在的なシャイネスが高いほど、自己紹介の中であいさつが少ない傾向にあることから、自己紹介を聞いた人が抱く第一印象に影響するのではないか」と考察しました。潜在的なシャイネスが、実際の行動や他者が抱く印象に影響する可能性が示唆されたといえます。ただし、前回に引き続き、分析対象者の少なさや、現実場面とは乖離があるといった課題は残るため、解釈は慎重に行うべきだと考えています。
発表時は幸いにも多くの方にお越しいただき、議論を行うことができました。前回と同様、収集した指標や結果・考察についての質問・議論に加え、IATの測定対象に対する質問や意見をいただきました。また、実際の行動に影響しうる可能性が示されたことについては、ポジティブなご感想を多くいただくことができ、嬉しく感じるとともに、論文化への意欲が湧きました。加えて、IAT以外の潜在的指標を用いている方とも議論ができ、他の潜在的測定法を用いた測定も興味深いと思いました。
社会心理学会は、私が参加している学会の中でも特に関心が高い学会のひとつです (もちろん、どの学会も楽しみなのですが)。いつも多くの刺激があり、また知り合いも多く、議論のたびに新しい発見があります。来年は沖縄からだいぶ離れて北海道の予定とのことですが、論文執筆のみならず、学会発表の継続は重要と考えていますので、ぜひ参加しようと思います。
レポート中の文献
相川充・藤井勉 (2011). 潜在連合テスト(IAT)を用いた潜在的シャイネス測定の試み 心理学研究、 82、 41-48.
藤井勉・相川充 (印刷中). シャイネスの二重分離モデルの検証―IATを用いて― 心理学研究、 84、 529-535.
Fujii、 T.、 Sawaumi、 T.、 & Aikawa、 A. (2013). Test-Retest Reliability and Criterion-Related Validity of the Implicit Association Test for Measuring Shyness. IEICE TRANSACTIONS on Fundamentals of Electronics、 Communications and Computer Sciences、 E96、 1768-1774.
藤井勉・澤海崇文・相川充 (2013). 顕在的・潜在的シャイネスが自己呈示行動に及ぼす効果―自己紹介場面を例として― 日本心理学会第77回大会発表論文集、 58.
~顕在的・潜在的シャイネスが自己呈示行動に及ぼす効果 (2)―自由記述に基づく検討―~
(藤井勉・澤海崇文・相川充)
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