CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。
日本心理学会第77回大会 発表報告
~シャイネスを測定する潜在連合テストの再検査信頼性―1か月間隔での検討―~
札幌コンベンションセンターおよび札幌市産業振興センターにて、2013年9月19日から21日にかけて開催された日本心理学会第77回大会に、連携研究員の藤井研究員と参加しました。
前回、CRETから補助を受けて7月にも札幌にて別の学会の大会に参加した際は、避暑のような感覚で過ごすことができましたが、さすがに9月ともなると長袖やジャケットを羽織らないと肌寒く感じるほどの気温でした。実は、これで今年3回目の札幌なのですが(今夏に1度、私用で観光に来ていました)、なぜか札幌の街並みは何度見ても飽きません。今回も前回と同じく交通の便を考慮して“すすきの”という歓楽街のホテルに宿泊したのですが、場所柄、様々な人が多く行き交うところなので、ホテルの周りを散歩するだけでも新鮮に感じます。生まれてからずっと東京に住んでいたこともあり、ただ単に東京に飽きてきただけなのかもしれません。
さて、私と藤井研究員はそれぞれ、CRETから補助を受けて実施した2つの研究(シャイネスを測定する潜在連合テストの再検査信頼性―1か月間隔での検討―、顕在的・潜在的シャイネスが自己呈示行動に及ぼす効果―自己紹介場面を例として―)を発表しました。2件ともポスター発表を選択したのですが、異なる発表日に設定されていました。その甲斐あってか、2件が同じセッションに割り振られる場合に比べて、より多くの研究者と交流できたように思います。
具体的な発表内容として、潜在的なシャイネスを測定する潜在連合テストという検査法の安定性を検討しました。シャイネスとは内気や恥ずかしさを表す性格特性であり、伝統的には質問紙のような形式で測定されていました。しかし、我々の研究チームはここ数年にわたって、質問紙のような形式では測定されることのできない、無意識的なシャイネスを測定するテストについて研究を続けてきました。このようなテストは潜在連合テストと呼ばれ、PC上で実施できるもので、画面上に表示された単語を一つ一つカテゴリ分けする課題を行います。その反応時間を測定することによって、人の無意識的なシャイネスが測定されるという考えに基づくものです。
このようなテストを開発する際に気をつけなければいけないのは、そのテストがどの程度安定して人の特性を測定できるか、ということです。つまり、安定していないテストというのは、異なる時点で測定した際に大幅に異なる値が記録されるものであり、テストとしては望ましくありません。そこで、我々はテストの安定性を確認することを目的として研究を行いました。今までに1週間間隔での安定性を検討し、論文発表もしてきました(参照:Fujii, Sawaumi, & Aikawa, 2013)。しかし、その期間が長くなった場合も潜在的シャイネスを安定して測定できるかどうかは不明です。そこで、今回の研究では1か月間隔で潜在連合テストを2度実施し、その安定性を検討しました。その結果、2時点の潜在的シャイネス得点はr = .53という正の相関を示し、これは潜在的な測定法の中では十分な安定性を持っているといえます。
日本心理学会は、日本の心理学において最も大きな団体といっても過言ではありません。大会を通じて、教科書でしかお名前を拝見したことのないような著名な先生と交流することもでき、大変貴重な体験でした。また来年度も機会があれば参加したいと思っています。
~シャイネスを測定する潜在連合テストの再検査信頼性―1か月間隔での検討―~
(澤海 崇文・藤井 勉・相川 充)
(CRET連携研究員 澤海 崇文)
2015-09-01
教育システム情報学会 2015年度 第40回全国大会研究発表報告 学生にクリティカルシンキングを促すための授業実践(2) -ディベートに頼らず、疑問を投げかける効果について-
若山 昇
2015-08-19
アジア社会心理学会 発表報告 ~Malleability of Shyness Through Evaluative Conditioning (評価条件づけによるシャイネス変容の可能性)~
澤海 崇文
2015-03-02
SITE (the Society for Information Technology and Teacher Education)発表報告 「MOOCを利用した英語学習の可能性」
赤堀 侃司
安西 弥生