CRETから、最新の教育・テストに関する研究発表論文をお届けします。
日本教育工学会(JSET)2016年第1回研究会(ICTを活用した学習支援環境・基盤/一般)発表報告
「小テストの出題方法とテスト接近・回避傾向を考慮したタブレット端末とスマートフォンによる正答率の比較分析」
2016年3月5日に、香川大学(幸町キャンパス)で開催された日本教育工学会研究会に参加し、「小テストの出題方法とテスト接近・回避傾向を考慮したタブレット端末とスマートフォンによる正答率の比較分析」と題して発表を行いました。
本研究の背景として、年々、大学生の情報に関するスキルが変容していることから、大学における情報教育の授業改善が求められていることが挙げられます。FD(Faculty Development)の観点から、大学では授業時間外学習の促進や学生の知識定着を目指した授業改善が求められています。これらの課題を解決するために、筆者はスマートフォンやタブレット端末などを活用したモバイルラーニングに着目し、大学生のテスト接近・回避傾向を考慮した小テストのあり方について研究を行ってきました。筆者の先行研究では、スマートフォンにおいて、全ての問題を一画面に表示する「全問表示」と一問一答形式で出題する「一問一答」では、前者の方が小テストの正答率が高いことが示されました。しかしながら、タブレット端末での分析を行うことが求められていました。
そこで本研究では、タブレット端末に着目し、これを利用した授業時間外における小テスト配信と、自主的な小テストの実施場面を想定した実験環境を構築しました。そして、問題の文脈を意識した多肢選択と穴埋めの混合の小テスト(15問)を作成し、これらの問題を全問表示と一問一答の出題方法で出題した場合、正答率にどのような差異が生じるか、テスト接近・回避傾向の観点から追究することを目的としました。さらに、先行研究のスマートフォンによる正答率の結果と本研究のタブレット端末による正答率の結果を比較分析し、ディバイスによる差違を追究しました。
本研究では、先行研究と同様に、60名の大学生を対象に多肢選択と穴埋めの混合問題(計15問)をタブレット端末で実施しました。この際、全ての問題を一画面に表示する「全問表示(文脈あり)」群(30名)と一問一答形式で出題する「一問一答(文脈あり)」群(30名)に分けました。テストによる知識定着を図るためには、先行研究より、学生のテスト観(テスト接近・回避傾向)に着目することが重要であることから、先行研究と同様、学生のテスト接近・回避傾向を分析しました。
次に、テストの正答率を出題形式やテスト接近・回避傾向で比較分析しました。この結果、以下の知見が得られました。
・タブレット端末を用いた正答率について、小テストの出題形式による差異はなかった。
・タブレット端末を用いた正答率について、テスト接近・回避傾向が「低高」の学生は、全問表示であると、「高低」の学生よりも正答率が下がった。
・スマートフォンとタブレット端末の正答率について、スマートフォンの場合、全問表示の方が一問一答よりも有意に正答率が高く、特に、テスト傾向が「低高」の学生がその傾向であった。
今後の課題として、1)小テストに対する動機づけなどの主観データの分析を行うこと、2)文脈の有無を考慮した小テストの問題について、タブレット端末で行うことによる正答率や動機づけに関する研究を行うことが挙げられます。
最後に、本研究会では多くの先生方からアドバイスをいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
「小テストの出題方法とテスト接近・回避傾向を考慮したタブレット端末とスマートフォンによる正答率の比較分析」(北澤 武)
(CRET連携研究員 北澤 武)
2022-08-02
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